魅惑の秘夜 一条きらら
夢を見ていた。
眠りの底から浮かび上がりながら、由梨絵はベッドにうつぶせの姿勢で寝ているのに気づいた。
(また、あの夢……)
目を閉じたまま、ゆっくりと寝返りを打って、うつぶせから仰向けになる。
たった今まで見ていた夢を思い起こし、身体の奥に火照るような熱さを感じた。
男の指、男の愛撫、行為中の囁き――。
今朝もまた、性的な夢を見ていたのだった。
そして、こんな時は、いつもベッドにうつぶせになった姿勢で、目が覚める。
まるで、疼く乳房や下腹部を、身体の重みでベッドに押しつけ、眠りながら快感を味わいたいようにだった。
(今朝の夢も、いつもと同じような内容……。夫ではない男に、抱かれていた……)
その男は誰なのか、顔も覚えていない。
夫ではないことだけは、確かである。
過去の恋人でもなかった。
好きな映画俳優とかタレントでもないし、周囲の知人でもなかった。
(夢に見るくらいだから、理想的な男性ってことになるのかも……)
そう思いながら由梨絵は、掛け布団の中で、ネグリジェの裾をたくし上げた。
シルクの純白のパンティの上から、指先で下腹部に触れてみる。
熱く湿った感触があった。
淫らな夢を見た証拠のように、眠りながら秘部に蜜をあふれさせていたのだ。
夢の中で快感を味わったせいか、それとも欲求不満の女のように、この身体が満たされていないせいだろうか。
「ああ……」
と、由梨絵は熱いため息をつき、身体をクルリと半回転させて、ふたたびベッドにうつぶせになった。 〈続く〉