誘惑のベッド 一条きらら
エステティック・サロンのシャワーを浴びた百合香は、サウナで汗を、たっぷりと流した。
その後、個室の中央に置かれた遠赤外線マットのベッドの上へ、うつぶせの姿勢で横たわる。
商店街のビルの三階にある、このエステティック・サロンに、百合香は月に二度、通っている。
選んだコースは、ボディ・トリートメント・コース。
室内はエアコンが効いていて涼しかったが、ベッドは遠赤外線マットの熱で温められている。
百合香は栗色にカラーリングしたセミ・ロングの髪を、アップにまとめてタオルで包み込み、使い捨てパンティだけをつけた裸体である。
ベテランの担当エステティシャンの手で、フランス製の海藻スクラブを、体の背面の足先から塗り込まれながらのマッサージが始まると、独特の心地良さに包まれて、軽く目を閉じる。
担当エステティシャンは、三十三歳の百合香より二つ年下の松崎亜矢子。
エステティック・サロンが流行になったばかりのころと違って、最近は料金が、そう高くない。百合香の小遣いで支払える金額だった。
(ああ、何て心地いい感覚……)
エステティシャンの絶妙な手の動きと感触に、百合香はいつものように、うっとりさせられた。
「百合香さんの体って、いつ見てもきれいですね。白くてすべらかな肌。くびれた腰からセクシーなヒップにかけての曲線、この脚線美……」 エステティシャンの亜矢子がそう言いながら、足先からマッサージしてきた左右の掌を、腰のくびれから尻へと、海藻スクラブを塗り広げる。
「くくッ……」
と、百合香は思わず、声を洩らした。
「ふふッ、くすぐったがり屋さんですね」
亜矢子が冷やかすように笑って、左右の掌を、百合香の背中へと移動させる。
「ほかのお客さんは、くすぐったがらないの?」
「あまり、そうでもないみたいです。百合香さんは特に、くすぐったがり屋さんみたい」
「そうかしら」
「男性とのベッド・インでは、感度良好、っていうことかも……」
「ま、亜矢子さんたら」
腕や肩、首筋まで海藻スクラブを塗り広げながらのマッサージを終えると、
「はい、あお向けになって下さい」
と、亜矢子が言った。 〈続く〉